着物の美しさを世界へ【着物アート第一人者】和宝代表・金森美穂



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額縁に入った美しい絵。一見そのように目に映るこの写真。

これは絵ではなく、本物の着物が額縁に入っているのです。

裁断、のり付け等は一切されておらず、『畳み込み』という緻密で計算された技法のもと額縁に収められた着物。

この技法を編み出し、『着物アート』として世界に向け着物の素晴らしさを発信する金森美穂様にインタビューさせていただきました。


− まず初めに、着物アートの象徴でもある『畳み込み』の技法を開発したきっかけを教えていただけますでしょうか。

 私は前職で、化学技術の分野で新しい技術を開発して世界に発信していく仕事に20年以上携わっていました。そこでお付き合いのある海外のお客様へのおもてなしの方法として、温泉に連れて行ったり着物を着せてみたりしていました。そこで、もっと日本の文化に触れて欲しいということで着物でガウンを作ることにしました。しかしあまり上手くいかずもっと綺麗な着物でガウンを作ろうと思い留袖を買ってきて裁断しようとしたところ、外国人である私のパートナーが「こんなに美しく、日本の素晴らしい職人さんが作ったものにハサミを入れてはダメだ」という言われてしまいました。

そこから着物にハサミを入れず、かつ着物の色落ちを防ぎ保護ということもテーマにして試行錯誤した結果、今の形に辿り着きました。

コンセプトは自分の見せたい柄に焦点を当て額縁にフィットする最適な大きさにし、それ以外は裏側にたたみこむ。着物そのままの形を保護するためノリも使わず、縫いと引っぱりだけでこの形にしています。

− 縫いと引っぱりだけですと、バランスが重視される非常に細やかな作業が求められそうですね。

はい。点と点で引っ張ってしまうと布に寄りが出てしまい美しい形にできません。そこで、面で引っ張るという独自の技法を開発しました。

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−『着物を美しいまま届けたい』という思いから生まれた技法なのですね。そんな金森様と着物との出会いを教えていただけますでしょうか。

私の祖父母は呉服屋を営んでいたということもあり、小さな頃から着物に触れる機会が多くありました。昔は非常にやんちゃで男の子のような性格でした。そんな私も着物を着ると女性らしくなっていました。着物を着ると足を広げられなかったり、息が苦しかったりとなにかと動きが制限されるじゃないですか。それが自然と女性らしい所作や振る舞いになり、気持ちまでも女性らしさで満たされるんです。それが楽しくて、着物を着るのが子供の頃から大好きでした。


− 幼い頃の記憶にルーツがあったのですね。それでは、この技法は完全にプライベート(個人的な趣味)の中で生まれていったものなのですか?

というよりは、事業化としての可能性をある程度感じながら開発していました。前職がプロセスエンジニアということもあり、事業化できるような方向で私が研究していき、ビジネスディベロッパーであるパートナーの意見を仰ぎながら辿り着いたという感じです。

これまで行ってきた展示会やプロジェクトは、全てパートナーである彼が企てたものなのです。世界を視野に入れた中で、どの分野で通用するかということを検証する目的でもあるのです。

この事業を始めて5年目になります。海外での活動が多かった中、色々な経緯があり昨年10月から本腰を入れてこの事業に取り組もうと決めました。気持ちも新たに日本に帰ってきたところ、ヒルトンホテル東京の地下にあるヒルトピアから運良く展示のオファーがありました。この時の反響がとても大きかったんです。マーケットして入りにくいと言われている熟年層からの支持を得られたことが大きかったですね。この事業のポテンシャルの高さというものを感じました。そこから様々の場所からオファーが来るようになりました。

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− ここ一年足らずでの躍進だったのですね。

 はい。パートナーに今年1年のうちに事業として進めていくか否かを決めると言われ、必死になってやりました(笑)

2019年ラグビーW杯、年号改定、そして2020年東京オリンピックなど日本への注目が高まってきます。それに伴い、アッパークラスの外国人が日本にやって来ます。その前に事業としての目処を立て、体制作りをしていこうと考えています。都内にギャラリーを持つことが目標です。


− 文字通り今年が勝負の年になってくるわけですね。次に、美しさへのこだわりについてお伺いさせていただきます。

 着物本来の形というのは1200年変わっていません。製法もほぼ変わりなく、一枚の生地から出来上がっている。世界に様々な伝統的な衣装がある中で、ここまで形が変わらず柄だけが進化しているものは日本の着物だけなのです。

着物は時代や政治に影響を受けながら歴史とともに変化してきました。その中で大正~昭和にかけて作られた着物に素晴らしいものが多いように感じます。職人の技術も熟練されていて、クオリティ的にも高い。戦後の復興のエネルギーも着物製作にぶつけてきている。特にその時代の『枠にとらわれない美しさ』というものを皆さまに伝えていきたいです。


− 海外の方にそれを伝えるのは容易ではありませんよね?

 前職の頃 日本の最先端の技術を海外の方々に紹介している中で、日本の技術が高すぎて海外ではそれを使う環境や技術が整っていないということに気がつきました。日本の技術は海外では『過剰スペック』なの?と感じることもありながら、「なぜこんなにも素晴らしいものを取り入れようとしないの?」と非常に悔しい気持ちになることが多かったです。

私は『過剰スペック』こそがクオリティの真髄だと思います。しかし、それと同時にこの『過剰スペック』を外国人に押し付けていたことに気がつきました。

着物という伝統工芸にも同じものを感じました。布にデザインを描くという作業ひとつ取っても、下書きの時点で原料を抽出したりと非常に手間をかけています。完成品を目の当たりにしただけではわからない制作工程がたくさんあります。海外の方にはその工程や技術を素直に伝えながらその美しさを見ていただく、それだけで非常に喜んでくださいます。これこそが前職でもやりたかったことであり、同時に自分にとって本当にやりたいことなんだなと強く感じています。私の作品を通じて、日本のモノには素晴らしい『過剰スペック』が詰まっているんだという目線になってもらえればと思っています。


− 文化を押し付けるのではなく、感じてもらうということですね。

「着物は着るもの」「お茶は点てなさい」など、文化を押し付けてしまいがちです。

着物アートは、『観て感じてもらう』だけで伝わりやすいところが良いですね。


− 今後、どのように活動を展開して行きたいですか?

着物というものは、世界的に見ると民族衣装の一つに過ぎません。美術館でも、ほとんどが資料館のような形で展示していることが多いです。それでは1200年形を変えない民族衣装としての見え方しかなく、匠の技を見い出すことは難しいと思います。

そこで、この事業を通じて着物を美しく見せ、また、額縁に入った絵画のようにインテリアとして溶け込む『着物テリア』として、着物と共存していくということを世界に発信していければと考えています。

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−『着物テリア』ですか。確かに、着物を着るということは現代ではなかなか難しいことですもんね。

 はい。もちろん着ていただくことも重要と思いますが、インテリアアートとして世界の市場に入り込んでいけるだけの価値があると思うんです。インテリアとして常に同じ空間に着物があり、機会が来れば額縁から取り出し着ることもできる。タンスの中で眠っているはずの着物に命を吹き込むことができます。

そしてゆくゆくは着物の着付け同様に、日本人の方達が自ら畳み込みができるような形になっていけばと思います。自分の家宝を自分の手で守り、活かしていけるような世の中にしていきたいです。



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展示会で飾るだけでなく、インテリアとして空間に共存させる。

東急リバブル(株)のモデルハウス(洋室)に展示したところ、一気に部屋の雰囲気が上がり部屋は即完売したという実績も持つ。

将来、家族の会話で「この着物はおばあちゃんが昔に着ていたものなのよ」なんていう会話が生まれる日がくるかもしれませんね。

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実際にこの着物アートを見させて頂き、色褪せた部分や少しのキズ それらが味わいとなってさらに額縁の中を彩っていました。

黒色ひとつ取っても、深みがある 現代で生活をしているとなかなか感じることのできない『黒』を感じることができました。

将来、着物が生活の一部となる日が近いかもしれません。


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【PROFILE】

金森美穂 
和宝(Wa-Dakara)代表。埼玉県所沢市出身。キャリアウーマンとして海外を中心に活動する中で、日本の伝統工芸等を海外に発信したいと模索。そしてどこの家庭にも眠っている古い「着物」に着目し、インテリアの装飾品として 「着物アート」を発案。海外でも大きく評価され、日本文化の浸透に努める。

和宝(Wa-Dakara)
埼玉県所沢市こぶし町31-20
04-2937-3358

和宝 HP
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