ベルリンから世界各地に 〈アーバンファーム・ネットワーク〉をはり巡らす。 最注目のスタートアップ「Infarm」が東京へ!



ついこの間までは変わらないはずだったルールも、つまらない定型文も蹴飛ばして。大胆不敵に、自分が見つけたやり方で社会のあり方を変えようと動く。信じた方向に身体を動かすことは、少しの向かい風じゃ揺らがない「自分らしさ」になる 。いまの生活からどこまでも続いていく『Lifegenic』を手にする秘訣は、きっとそこにあるはずだ。
 アイテムは、テクノロジー、等身大のアイデア、飾らない信念、マイペース。都市に熟していくソーシャル・グッド・ムードを特集。


2019年には、ヨーロッパの1,000箇所に都市型ファームを——気の遠くなりそうな話だが、彼らはすでに100のファームを設置し機能させ、さらに残り少ない年内中に、もう200を設置完了する予定だという。それも、すべてを室内に、だ。
ベルリン発の「Infarm(インファーム)」、小さなアーバンファームをユビキタスに都市ベルリンにはり巡らせている。合言葉は「feeding cities of tomorrow(明日の都市を育てる)」、葉の葉脈のように脈々と、小さなファームの連結が都市の新たな食のインフラとして機能しようとしているのだ。そしてそれは、新しい都市の形をつくろうとしている。

今年に入って約28億円の資金調達に成功。現在、ヨーロッパで、いや、世界で最注目のファーム・スタートアップである彼らインファームを、11月1日にHEAPSは東京に呼んで一席設けることにした!LEDライトをあてるごとくいろいろと聞きだす一夜の前に、まずは彼らがいかに都市の食を根っこから変えようとしているのかを、ここで。

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インファームの創始者たち。左から、オスナット・ミカエリ氏、エレツ・ガロンスカ氏、ガイ・ガロンスカ氏。


“キャビネット”のなかの小さなファーム、グラウンド場に匹敵


「これはまだ、ヴァーティカルファーム(垂直農法)革命の序章に過ぎない。わたしたちはそう感じています」。2013年、ベルリンのとあるアパートのリビングではじまった、個人的な水耕栽培のDIYパイプ・ファーム(“先生”はユーチューブだった)が、2014年にはベルリンの倉庫をファームに変換させ、その2年後、2016年には、現在のモジュラー型*のファームを完成させ、出発点であるベルリン内に拡散をはじめる。

*共通規格の既存部品を組み合わせてつくる工業製品・精密機器のこと、またそのつくり方を指す。

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まるでキャビネットに、緑野菜が整理整頓されて、しまってあるようだ。


インファームも近年続々と増えているハイドロポニックス(水耕栽培)のヴァーティカルファーム(垂直農法)だ。独自に開発した、グローイングトレーと呼ぶヒマワリの花をイメージしたトレーに苗をつめ、縦に積みかさねて室内に設置して栽培する。さまざまな大きさの室(へや)のスペースに対応可能。ヴァーティカルファームは、農場を横ではなく縦(ヴァーティカル)にし、スペースを取らずに栽培できるのが利点だ。土も太陽光も必要ない。かわりに、適量の栄養を含んだ水が植物を潤わせ、淡いムラサキのLEDライトが最適に照らす。

インファームのモジュラー型ファームでも、最小限の面積で多くの作物を育成できる。たとえば、2平方メートルぶんのインファームを設置すると、通常の土壌農業の250平方メートルの生産能力に匹敵。250平方メートルというと...都市なら小学校のグラウンド数個ぶんか? それが、オフィスの一角ですんでしまう。さらには95パーセントの水を削減し、75パーセントの肥料削減。室内なので殺虫剤も必要ない。食べる人、あるいは買う人がいるまさにその場所に設置するため、運搬コストも、運搬による二酸化炭素もごっそりカットできるのだ。無数のアーバンファームを室内に設置することは、「Reshaping the urban landscape(私たちは、都市の風景を変えているのです)」。

何より「摘んで数秒」で食べることが、ビル群がひしめく都市の室内でできるということ。すでにインストールしたレストランからは「ヴァーティカルファームは、僕たちシェフの調理も革新してくれると感じています。摘みたての、高く香り立つ瞬間のハーブを皿に彩る。これはまさに、僕たちシェフの夢でした」という声が届く。

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ただのファームではなく〈ファーム・ネットワーク〉を築く“サブスクリプション型”


彼らのアーバンファームとしてのビジネスも興味深い。彼らは、ファームそのものを売るのではなく「システムと管理」をまるっと売り、月額費用を支払ってもらうという方法を取る。昨今、ますますアツい“サブスクリプション型”だ。
 インストールするファーマーたち(インファーマーと呼ぶ)は、多様な種から何をどれくらい育てるのか、いつ収穫するのかなどをインファームとともに計画。インファームがシステムで育つプロセスを管理しケアをし続ける。たまに誰かが見に来て状態をチェック、ではなく、インファームが保持する“中央センサー”が、24時間7日体制のリアルタイムで、すべてのファームの環境の状態を把握しながら調整を続け、パフォーマンスを最大化するように維持する。
 また、それぞれの種に「成長レシピ」なるものを用意。サイズや味、食感、風味、など最高の育ちができるよう、環境パラメーターを調整してくれる。これにより、希少種も含めて年間を通しての成長が可能になる。室内だから天候に左右されないという以上に、一つひとつのファームの環境を最適化することができる、ということだ。

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これにより、ファームを一度売ったきりにするよりも、一つひとつのファームの持続可能性をあげていくことができる。また、「わたしたちインファームという中心の"ファーム・プラットフォーム"を持つことで、個々のファームがすべて繋がりファーム・ネットワークになっていくのです」。月額で場所を借りて畑いじりの超進化版、か。それぞれが独立したファームとして個々に存在するにとどまらず、拡散されたファームが統制され、都市全体の大きな〈ファーム・ネットワーク〉として機能していくわけだ。


都市の人々が「もう一度、食の主導権を手にする」

スーパーマーケットやレストラン、倉庫など、すでに100ファームの配置をすませ、すべてが機能しているという。食べる人のすぐそばにヴァーティカルファームを置く。それは、いままでになく新鮮で栄養価の高い食材へのアクセスをあたえただけではない。育つ作物がつねに自分たちの側にあり、何を育てるかを考え、食べると決めて摘む。自分たちの必要とする量を考え、また栽培する。それは、「自分たちでもう一度、“食べる”の主導権を手にすることができるのだと実感してもらうこと」。

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2050年にはこの世界の人口は97億人に達すると推定され(現在、72億人)、その増え続ける人口を養うには、現在の食の供給システムではあまりにも非効率だと指摘されている。たとえば、インファームが拠点とするベルリン、ドイツでは消費される70パーセント以上の食物が国外からの輸入。都市が食べ物を手に入れるまでに膨大な費用に燃料、また労働力がかかっている。さらに、その長い旅の途中で食物の半分ほどがダメになる。
 そこで、インファームが導き出した回答は「食べる人と、食物が育つ場所の距離をできる限り短くすること。最小限のスペースで最大限の栽培をすること」。一見単純にも見える実直な答えに向かって、都市の食の供給を変えてしまおうと舵を切った。

「都市化は止まりません。つねに拡大を続け、人口が集まり続ける都市のフード・システムを、まずは変えていきます」。大部分の人口が集まる都市の食物が都市で作られることになれば...都市の食の供給連鎖を変えることは、ひいては世界の“食べる”を根っこから変えていくことになる。

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ヨーロッパにまずは1,000箇所。これもたんなる序章に過ぎない。今月にはフランスへの進出が決まっており、その次はチューリッヒ、アムステルダム、ロンドンへ。米国のシアトル、韓国のソウルまでの展開も将来的に視野に入れているという彼らは、こう回答している。「2050年、世界は90億を超える人を養わなくてはならない。まさに、その課題への回答となるために、私たちは動いています。そして、まずは「2020年、ヴァーティカルファームの革命がくると確信しています」。

都市をつくるのは人で、人をつくるのは食だ。食が変われば人も変わり、人が変われば都市は変わる。つまり、食が変わっていくと、都市もその姿を変えていくということだ。

さて、来たる11月1日。インファームがベルリンから東京 にやってくる。場所は、南青山のIntersect By LEXUSだ。インファームとそこに集まるトーキョー・シティのみんなで〈明日の都市の育てかた〉についてをじっくり話す一夜をひらきたい。先端農業においても最高技術を誇る日本のあちこちから、ハイドロポニックスの野菜たちも集まるぞ。栄養満点の小さな野菜たちを味見しながら、話を耕そうじゃないですか。

参加募集についてはこちらのバナーからご確認ください(FBに飛びます!)。そして今回も、HEAPSのイベントを一緒に作ってくれるコントリビューターの方々も募集中!詳細は下に続く!

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HEAPS



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